日高ショーコ『憂鬱な朝(1)』ネタバレ感想｜若き子爵×年上家令のクラシカルBL

明治時代のお貴族様BLの金字塔『憂鬱な朝』！
若くして子爵位を継いだ久世暁人と、先代の頃から久世家に縛られる有能な家令・桂木智之の全8巻の長編ラブロマンスです。

もう時代設定もキャラのビジュもストーリーの運び方も秀逸で、今でもマイベストBLの頂点に輝く作品です！
日高先生の華麗な絵で、ドレスやお屋敷など華族のきらびやかな世界が描かれるのも魅力。

本記事は『憂鬱な朝』1巻のネタバレを含む感想です。
未読の方はご注意くださいませ！

『憂鬱な朝(1)』こんなワードが刺さる人におすすめ！

#明治時代
#上流階級
#主従
#黒髪受け
#年下攻め
#年の差
#時代物

タイトルと表紙からしてダークな印象ですが、ハピエンが約束されていますので安心してお楽しみください！

明治時代の華族世界が細かく描かれていて、私はこの漫画で公侯伯子男（華族の偉い順）を覚えました。

『憂鬱な朝(1)』書誌情報

著者	日高ショーコ
レーベル	CHARA COMICS
出版社	徳間書店
発売日	2009年5月1日

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『憂鬱な朝(1)』カップリング

久世暁人…10歳→17歳くらい。先代の死去に伴い10歳で家を継いだ年若き子爵。父母を早くに亡くしたがまっすぐに育つ。桂木のことで頭がいっぱい。

×

桂木智之…21歳→28歳くらい。久世家の分家の出で、先代から暁人が成人するまで久世家の一切を任されている家令。完璧な外面の裏で何を考えている…？

『憂鬱な朝(1)』超個人的レビュー！

ストーリー
絵
エロス
時代設定

『憂鬱な朝』を初めて読んだとき、明治の貴族社会で当主と従者がBL関係で、しかも裏切りの気配がそこかしこに張り巡らされていて、そのあまりの面白さに「商業BLってこんなに自由なんだ！！」とすごく感動したんですよね。

あと日高先生が描くちょっと見下した感じのキメ顔の桂木がもう癖に直撃。
その桂木がどんどん人間らしく変化していくのも楽しみの一つです…！

『憂鬱な朝(1)』ネタバレ感想

子爵の嫡男でありながら、病弱な母と鎌倉の別邸で暮らしてきた暁人は、父の死後、爵位を継ぐために10歳で初めて東京の本邸にやってきます。

そこで出会うのは、父が「久世家の全てを任せた」と言い残した家令・桂木。
最上位の使用人である家令であるのに、桂木はまだ20代前半の若さで驚くと同時に、「全ては暁人様のためですから」と言いつつ慇懃無礼が透けて見える桂木のことが気になって仕方がない暁人です。

桂木は教育係として、彼が今後の世の中を生きていくために最重要視している経済学を徹底的に暁人に教え込みます。

そんな中、西園寺侯爵家の嫡男・重之が個人的に桂木を訪ねてきた様子を目撃した暁人。
2人のただならぬ場面を覗き見てしまった暁人は、桂木への執着を強くしていきます。

ここで桂木の口から「新華族」という言葉が出てきますが、知らなかったので調べてみました。

明治時代、大名や公卿などの家柄によらないで、特別の勲功によって新たに華族に列せられたもの。公家華族・大名華族などに対していう。

精選版 日本国語大辞典

作中だと久世家は大名華族、西園寺家は公家華族と思われます。
明治維新後、今まで身分が低いとされていた人々のうち有力者が新華族となり、自分たちの立場を脅かすのでは、という不安に駆られて重之は経済に明るい桂木に助けを求めているのですね。

中学生に成長した暁人は、今度は森山侯爵夫人と思いっきり事後のセクシーすぎる桂木に出くわしてしまいます。

そこで桂木から聞かされたのは、自分が有力者と体を使ってでも関係を強くしているのは、久世家を子爵家から伯爵家に格上げ（陞爵）させるためだということ。
いまだに桂木の中には先代である父が大きな場所を占めていることを知る暁人でした。

ついに暁人が高等部に進学。
暁人の英国留学のために暗躍する桂木の噂話でうるさい同級生など相手にせず、友達はやり手実業家の嫡男・石崎だけのようです。

学校からの帰り道、石崎から「桂木家の当主の病状が悪化し、長男が家を継いだ」と聞きます。
桂木は普段から実家と関わりを全く持とうとしないため、「せめて見舞いに行け」と言いたかっただけなのに、勝手に私室に入り込んで余計なことばかり言うもんだからお怒りの桂木から「旦那様攻め」に遭う暁人。

桂木の言い分に納得できない暁人は、石崎の伝手を使って桂木家の当主で桂木の長兄・高之との会合をセッティングしてもらいます。

一方その頃、桂木は西園寺家と森山家へ送る結婚のお祝いの品について、前女中頭のきくに意見を求めに隠居した家へ赴いていました。

久世家と桂木家の確執について聞きたがる暁人に、高之は「家中にもっと詳しい者がいるだろう」と返しますが、久世家ではきくの采配により暁人が襲爵する前後で使用人が総入れ替えされていました。

高之は「旧藩時代の主従関係などなくなっている」と旧主家当主の暁人の前で言い放っちゃうくらいのアンチ久世家なんですけど、物語の最後まで地味に活躍してくれる頼りになるお兄さん（おじさん）。

暁人が高之から聞けた情報は「桂木が久世家に引き取られたのは暁人が生まれる2年前」ということ。
つまり自分が生まれることがなかったら、先代は桂木を養子として跡継ぎにするつもりだったのでは……ということに気づきます。

その日の夜更け、自分の方から暁人の部屋にやってきた桂木（事務連絡だけど）。
暁人は覚悟を決め、桂木に徐爵させてやる、その代わり……という「取り引き」を持ちかけます！！

2人の初えっちは殺伐＆ひっかき傷でボロボロ。この2人らしい。

翌朝、桂木がいなくなったベッドで「こんなはずじゃなかった」と後悔する暁人。
桂木は桂木で「もっと優しく接すれば良かったのかな」。
この後何年にも渡ってすれ違い続ける2人…！！

その日桂木は森山夫人のもとへ。
「嘉世子様にはわかりませんよ」とか、桂木は思いのほか夫人に素を見せているようです。

その晩、「陞爵してほしい」「先代の望みを叶えてほしい」と気持ちを吐露する桂木ですが、本心かどうかは分かりません。

昨日の暁人からの「取り引き」を受けて、桂木は「久世家に伯爵以上の地位をもたらすこと」と代わりに「一生涯あなたに仕える」という取り引きで返します。

『憂鬱な朝(1)』の個人的推しポイント

1.桂木智之のビジュ

細身！黒髪！怜悧な美貌！気が強い！
桂木智之は私のBL史上で燦然と輝くマイベスト受けなのです！！

この巻では出てきませんが、この顔で下着はふんどしなのがもう！ふざけないでほしい！！（時代的に洋風パンツがまだなかったんだろうけれど）

2.明治という時代設定

時代物の美味しさって、身分の差が公然と存在してるところかなぁと思います。
主従…甘美な響き…。

しかも『憂鬱な朝』は主が年下！
「人に傅くなんて考えられないわ」みたいな顔した年上美人が、陰に日向に学生子爵を支えて教育を施す…しかし裏では虎視眈々と当主の座を狙っている…はずだった…みたいな現代では無理がある設定も明治ならウェルカム！

3.「取り引き」から始まる関係

2人の肉体関係が始まる時、暁人も桂木も「取り引き」というおよそ甘味の感じられないビジネス的な単語を使うんですが、このギスギス感が『憂鬱な朝』の魅力だと思うんです！

暁人はもう最初っから桂木LOVEが溢れてますが、この後桂木がどんな風に暁人に溺れていくのか！
気難しいというか、情緒が豊かに育たなかった桂木が自分の気持ちを知っていく物語でもありますよね。

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