朝田ねむい『スリーピングデッド(下)』ネタバレ感想｜緻密な伏線回収の先には愛があった

上巻の謎を次々に回収して、衝撃のラストまで一気に駆け抜けた『スリーピングデッド』。

ラストは切なく悲しい幕切れでしたね…。
後味は良くないけど、こういうお話大好きです。

本記事は『スリーピングデッド(下)』のネタバレを含みます。
未読の方はご注意くださいませ！

『スリーピングデッド(下)』こんなワードが刺さる人におすすめ！

#執着
#グロ
#ゾンビ
#同級生
#30代
#教師
#科学者
#挿入なし

特殊な状況のため共依存関係だけど、対話を重ねて健全な愛を育んだカップルでした。

いつか終わりが訪れるんだろうなと思いつつ、ページをめくる手が止められない！

『スリーピングデッド(下)』書誌情報

著者	朝田ねむい
レーベル	Canna Comics
出版社	プランタン出版
発売日	2022年9月30日

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『スリーピングデッド(下)』カップリング

佐田聖二（さだせいじ）
元高校教師。事件に巻き込まれ殺され、間宮の手でゾンビになった。

×

沢尻（間宮）冬邪（さわじり（まみや）とうや）
研究所勤務の科学者。実は佐田の高校時代の同級生。

同級生だったことをコロっと忘れられるって結構ショック！　間宮どんまい！

『スリーピングデッド(下)』超個人的レビュー！

ストーリー
絵
エロス
セックスだけが愛じゃない

重くて暗いストーリーが大好き人間なので、結末も含めてとっても好きな作品です！　名作！

最後まで挿入なし＆片方は服を脱がないなど、見た目のエロ要素は低いのですが、別に身体を繋げるばかりがラブストーリーじゃないと思わせてくれました。
『スリーピングデッド』はめちゃくちゃラブストーリーです。

『スリーピングデッド(下)』ネタバレ感想

上巻は佐田が間宮の社員証を見つけ、彼の本名が沢尻であることを知り、高校の同級生だったことを思い出したところまででした。

佐田はモン吉を納屋に忍び込ませ、殺した男の財布を持ってこさせることに成功！
殺したクズ男は間宮をいじめていた「中橋木権造」だったという真実を知ります。

困惑した佐田は仕事から帰ってきた間宮に「あんたは沢尻なのか、殺した男は中橋木なのか」と直球で尋ねました。

その後の間宮の説明は端々は嘘ですが、大筋は真実なんですよね。

佐田は高校時代、間宮が中橋木たちにいじめられていたところを注意し、先生に告げ口したことを思い出します。

なぜ自分をゾンビにしたかと問われ「そんなものキミのことが心底嫌いだったからだ」と間宮は言いますが、本心は逆で、自分とは正反対の佐田のことをまぶしく思っていたのでしょう。

翌朝、佐田は間宮に過去のことを謝ります。

「むしろキミは…」と言いかける間宮。
見て見ぬふりだけじゃなく、中橋木に口を出した佐田にむしろ好感を抱いていたからゾンビにしてでも助けたんですね。

回想の高校時代、いじめ描写がしんどい…。

間宮ともう一人、ブタ田（太田）という男子生徒も中橋木たちのいじめの標的でした。

中橋木たちの行動は、オナニーさせる→フェラさせる→セックスさせるとどんどんエスカレートしていきます。

終わってから間宮が中橋木の教室に行くと、窓際で文庫本を読んでいる佐田がいました。

佐田は中橋木の机を窓から落とすことに協力してくれました。

「次あいつになんかしたい時は言って　俺も一緒にやるから」と言い去っていく爽やかの権化、佐田。

ある日、間宮がいきなり旅行に行くと言い出しました。
佐田は食料確保のための殺人旅行だろうと言いますが、間宮は否定します（太田を殺す旅行にしようとしてましたが）

間宮は昼食にサイゼリヤを選びますが、太田が開いたパン屋がよく見える場所だったからでした。

お宿は豪華！　部屋に露天風呂付きです！

「太田には妻も子供もいる、間宮が太田を殺すのを迷うなら、自分が他の死んでもいいやつを探す」と申し出る佐田。

結局、太田は非常食にすることで落ち着きました。

帰りの高速がひどい渋滞で、もう一泊することになりました。
お泊りと言えば恋バナ！

佐田は「セックスもするけど、距離感は友達でいい」という考え方で、間宮はそれに同調し得意げに「人間は一人でも生きていける」と言いますが…

「帰ったらセックスしてみよう　僕と君とで」という間宮の爆弾発言から一週間、ついにその日が。

そんな2人の不器用セックス（？）は間宮の手コキでイけなかったので、覆いかぶさりオナニースタイル。

「身体をくっつけて　寝そべって　軽いキスして寝るのがセックスより好きだったんだよ」と言う佐田。
佐田と間宮はいいパートナーになれたはずなのに…

世の中には殺してもいい奴は結構いるもんで、2人はさらに殺人を重ねます。

その帰りに油断してスーパーに寄ったがために、佐田の同僚だった野上先生が跡をつけてきて隠れ家がバレるという始末…。

間宮は野上先生を殺そうとしますが、佐田の意思を尊重し、とりあえず薬で眠らせて家の前に停めた車に放置しておくことに。

2人は隠れ家を手放して、田舎の一軒家に拠点を移しました。

後から思えば幸せの絶頂って感じの週末婚生活です。

離れるのが寂しい間宮
首輪が似合ってるから外させたくない間宮
一回キスを覚えるとめっちゃちゅっちゅする間宮

しかし、モン吉の食欲がなくなり、よく眠るようになってきたことから2人の幸せは崩れていって――

『スリーピングデッド(下)』の個人的推しポイント！

どんどん読むのがしんどくなって、ラストは何とも言えないやり切れなさが残るお話でした。

1.スリーピングデッドにすることができなかった現実

死にゆく佐田の運命を覆そうとあがく間宮と、残された時間を2人で過ごしたい佐田とのすれ違いが切なかった…。

なぜか「ヴァイオレットエヴァーガーデン」の「病気のお母さんがこれからの娘のために手紙を代筆してもらうけど、娘はもっと遊んでほしかった話」を思い出しました。

間宮は佐田を「スリーピングデッド」＝いつか目覚めるはずの眠っているだけの死体にすることはできなくて、彼の死を受け入れることもできませんでした（がんばったけど）。

「一人でも生きていける」って思っていたけど、実際に佐田と深く付き合ってしまったらもう一人には戻れなかったのかな…。

2.佐田が間宮の将来を思って遺した言葉

• 利用できる他者は利用しろ
• 上辺だけでもいいから他人と付き合え
• 人体実験はもうするな
• そして研究に熱中しろ
• 食事を取れ
• 酒は飲みすぎるな

佐田の言葉はすべてが真っ当で、間宮がうまく生きていけるように彼を想って遺してくれたもので…、愛が詰まってて泣けてきます。

間宮が佐田を荼毘に付して錯乱状態になっても「大丈夫、大丈夫…」と自分に言い聞かせているのが佐田の言葉を思い出しているようで悲しいです。

3.映画みたいなコマ割りの妙

一番つらいシーンが間宮の足しか見えないコマの連続で、間宮の顔は見えないのに佐田を完全に失った絶望が伝わってきます…。

お酒の缶やビンが徐々に増えてるのも悲しい。

ラストは大ゴマでやつれた間宮の顔、死ぬための注射と薬、幸せの象徴みたいな中庭を写してから「はぁ」。

あまり多くを語らないのがカッコいい描き方だと思いました。

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